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東京地方裁判所 平成5年(ワ)14631号 判決 2000年12月26日

原告

大日本インキ化学工業株式会社

右代表者代表取締役

【A】

右訴訟代理人弁護士

副島文雄

右補佐人弁理士

松下義勝

被告

株式会社菅野製作所

右代表者代表取締役

【B】

右訴訟代理人弁護士

柳原武男

右訴訟復代理人弁護士

柳原毅

右補佐人弁理士

斉藤侑

伊藤文彦

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は、原告に対し、金一億八〇〇〇万円及びこれに対する平成五年八月三一日(訴状送達の翌日)から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、被告に対し、後記一1記載の特許権に基づき、被告による二種類の製函機の製造、販売が原告の右特許権を侵害するものであると主張して、損害賠償金一億八〇〇〇万円及びこれに対する侵害行為の後である平成五年八月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

一  当事者間に争いのない事実

1(原告の特許権)原告は、次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有していた。

(一)  特許番号 第一一八八九九四号

(二)  発明の名称 カートンブランクの折装置

(三)  登録年月日 昭和五九年二月一三日

(四)  出願年月日 昭和五三年六月七日

(五)  出願番号 特願昭五三ー六七六二五号

(六)  出願公告年月日 昭和五七年八月一〇日

(七)  出願公告番号 特公昭五七ー三七四六〇号

2(特許請求の範囲)

本件特許権に係る明細書(以下「本件明細書」という。)における特許請求の範囲第1項の記載は、次のとおりである(以下、この発明を「本件特許発明」といい、この発明に係る特許を「本件特許」という。)。

「フイーダーユニツト、各種折ユニツト、ノリ付ユニツト、スタツカーユニツト等からなり、カートンブランクを前記ユニツトに連続的に移送する手段としてベルトを用いた多種の型及びサイズのカートンブランクの折を行う折装置において、カートンブランク型信号及びカートンブランクの特定の少数の寸法を示す信号が入力されたとき、入力された型信号にもとづき各ユニツトにおけるアタツチメントの要不要を判断する選択手段と入力された寸法信号にもとづきカートンブランクの全ての寸法信号を演算するための演算式を内蔵した演算手段を具えた制御手段と、制御手段からの制御信号にもとづき各ユニツトにおける折に不要なアタツチメントを折に邪魔とならない位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなるアタツチメント逃し装置と、同じく制御手段からの制御信号にもとづき折に必要なアタツチメントを所定の位置まで移動させる駆動手段と位置検出手段からなる位置決め装置とを設けたことを特徴とするカートンブランクの折装置。」

3(構成要件の分説)

本件特許発明の構成要件は、次のとおりに分説される。

A フィーダーユニット、各種折ユニット、ノリ付ユニット、スタッカーユニット等からなり、カートンブランクを前記ユニットに連続的に移送する手段としてベルトを用いた多種の型及びサイズのカートンブランクの折を行う折装置であること

B この折装置に、カートンブランクの型信号及びカートンブランクの特定の少数の寸法を示す信号が入力されたとき、入力された型信号に基づき各ユニットにおけるアタッチメントの要不要を判断する選択手段と、入力された寸法信号に基づきカートンブランクの全ての寸法信号を演算するための演算式を内蔵した演算手段と備えた制御手段を設けたこと

C この折装置に、この制御手段からの制御信号に基づき、各ユニットにおける折に不要なアタッチメントを折に邪魔とならない位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなるアタッチメント逃し装置を設けたこと

D この折装置に、前記制御手段からの制御信号に基づき折に必要なアタッチメントを所定の位置まで移動させる駆動手段と位置検出手段からなる位置決め装置を設けたこと

4(被告の行為)

(一)  被告は、別紙物件目録一、二記載の各製函機(以下、それぞれを「被告製品一」、「被告製品二」といい、併せて「被告各製品」という。)を製造、販売した。

(二)  被告各製品は、サイド貼り、ダブルサイド貼り、底貼りを行う製函機であり、これら三つの型及びサイズの変更に応じて折りに必要なアタッチメントの位置決めを行って、カートンブランクの折りを行い、三つの型の折り畳み函を作るものである。

(三)  被告製品一は、被告製品二に折返しユニット3Bを付加した点においてのみ構造を異にしている。

5(構成要件Aの充足性)

被告各製品は、いずれも本件特許発明の構成要件Aを充足するカートンブランクの折装置である。

二  争点及び当事者の主張

1  被告各製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(構成要件B、C、Dの充足性)

(原告の主張)

被告各製品は、以下のとおり構成要件B、C、Dを充足している。

(一) 構成要件Bについて

被告各製品のコンピュータ制御装置8内では、型信号が入力されたときに型の折りに必要なアタッチメントが選択され、選択されたアタッチメントによる折りに必要なカートンブランクのすべての寸法又は位置が瞬間的に暗算される。

さらに、コンピュータ制御装置8により、演算結果の各データとによって、各アタッチメントの移動の検出データを比較し、一致したときに駆動手段に指令を送ってアタッチメントを位置決めされる構造になっている。

このことからみて、コンピュータ制御装置8には、制御手段として選択手段と演算手段とが備わっている。

被告各製品のコンピュータ制御装置8は、三種のうちのいずれかの型信号とカートンブランクの厚さ、カートンブランク12の罫線の位置、両側縁の長さg、h(型信号と寸法信号に当たるもの)を入力するだけで、アタッチメントによる折りに必要なカートンブランクの寸法、すなわちカートンブランクに対する各アタッチメントの位置を演算し駆動手段に出力するものである。

このことは、被告各製品のコンピュータ制御装置8は、マイクロコンピュータを応用した株式会社大崎電業社製のコンピュータ式ポジショナーであることから裏付けられる。このコンピュータ装置は、わずか一〇個のデータを入力するだけで、製函機の二一か所の調整ポジションの各設定位置を三種類の異なったワーク(型)について瞬時に演算し、そのデータに従って自動位置決めを行っている。

以上によれば、被告各製品のコンピュータ制御装置8は、入力される寸法信号に基づいてカートンブランクのすべての寸法信号を演算するための演算手段を備え、併せて、入力された型信号に基づいてアタッチメントの要不要を判断する選択手段も備えていることは明らかである。

(二) 構成要件Cについて

被告各製品は、サイド貼り、両サイド貼り及び底貼りの汎用機であるが、右のうち底貼り以外の二種のサイド貼りをするときには、折返しユニット3Cにおいて、底折りフック35、35´などの底折りユニットと上部糊付装置4Aは使用されないし、そのままでは邪魔になる。このため、底折りフック35、35´などの底折りユニットと上部糊付装置4Aは、邪魔にならない位置に相当する上方又は側方に移動させて、このような障害を取り除くように構成されている。以下、これを具体的に説明する。

(1) 底折りフック35、35´について

底貼りからサイド貼り等に型替えするときは、下降した作業位置にある底折りフック35、35´はコンピュータ制御装置8の指令によってスプライン軸を回転させて上昇される。上昇位置はリミットスイッチにより検出され、コンピュータ制御装置8に与えられる。そうすると、コンピュータ制御装置8からの指令により、幅方向の逃げ装置が作動し、底折りフックを支持している二つの回転軸の回転により、底折りフック35、35´はあらかじめ所定のパルス数として記憶されている原点位置まで、幅方向に移動する。

折返しユニット3Cには底折りフック35、35´について高さ方向及び幅方向の逃し装置が設けられ、右上方位置や原点位置は邪魔にならない位置であり、これらの位置への移動は邪魔にならない位置への移動であることから、底折りフック35、35´は構成要件Cにいうアタッチメント逃し装置を備えている。

(2) 上部糊付装置4Aについて

上部糊付装置4Aは、一対の昇降フレームに取り付けられた二本の回転軸に支持され、回転軸の回転と昇降フレームの昇降により移動する。右移動は、糊付部の位置をエンコードが検出し、それに基づきコンピュータ制御装置8の指令により所定のパルス数として記憶されている邪魔にならない原点位置まで逃がすというものであるから、上部糊付装置4Aでも構成要件Cを備えている。

(三) 構成要件Dについて

被告各製品は、コンピュータ制御装置8の入力データにより三つの異なる型につき演算される各部の折りに必要とされるアタッチメントの設定位置に基づき、各アタッチメントを移動させて位置決めを行う装置であり、各アタッチメントを設定位置まで移動させる駆動手段とこの位置を検出する位置検出手段とを備えている。以下、具体的に説明する。

(1) フィーダー部1について

フィーダー部1は、積み重ねられたカートンブランク12を下から一枚づつ送り出し、七本の無端ベルト11、左右のサイドガイド13及びゲートが設けられている。

サイドガイド13を上昇させると、上限のリミットスイッチに当たり、その信号によりコンピュータ制御装置8は作動状態に入る。コンピュータ制御装置8からの信号により、駆動モータM1を起動して回転軸を回転し、サイドガイド13はそれぞれ幅方向に移動する。各回転軸の回転はエンコーダE1でパルスとして検出し、パルスのカウント数がサイドガイド13の設定位置に相当するパルス数に達したとき、コンピュータ制御装置8からの停止信号が駆動モータM1に送られ、サイドガイド13は設定位置に停止する。

右のとおり、被告各製品のフィーダー部1は、駆動モータM1とエンコーダE1を備えていることからしても、構成要件Dの位置決め装置を備えている。

(2) 折返しユニット3A、3Bについて

折返しユニット3A、3Bでは、機枠A、Bの間に左手フレーム、中央フレーム、右手フレームが配置され、これらに対応して、上部左手フレーム、上部中央フレーム、上部右手フレームが設けられ、対応する上下のフレームは一体に幅方向に移動できる。

各フレームには、各種アタッチメント(下部無端ベルト、折曲ベルト、ガイド片、上部無端ベルト、折戻しガイド340)が設けられ、コンピュータ制御装置8からの指令により、フレームとともに位置決めされる。フレームを移動させる各回転軸には駆動モータとともにエンコーダが設けられている。各エンコーダから送られるパルス数はアタッチメントの位置であり、この位置がコンピュータ制御装置であらかじめ演算されている設定位置に相当するパルス数に比べられて各アタッチメントの最終位置が検出され、一方、コンピュータ制御装置からの指令により各駆動モータが駆動されている。

したがって、被告各製品の折返しユニット3A、3Bは、構成要件Dの位置決め装置を備えている。

(3) 折返しユニット3Cについて

折返しユニット3Cでは、左手フレーム、中央フレーム、右手フレームが配置され、これらに対応して、上部左手フレーム、上部中央フレーム、上部右手フレームが一体に設けられ、上部及び下部のフレームの間は一体に移動できる。

各フレームには、各種アタッチメント(折曲ガイド35a、折戻しガイド35b、上部無端ベルト341、下部無端ベルト331)が設けられ、コンピュータ制御装置8からの指令により、フレームとともに位置決めされる。

右アタッチメントの位置決めは、前記折返しユニット3A、3Bと同様に行われる。

したがって、被告各製品の折返しユニット3Cは構成要件Dの位置決め装置を備えている。

(4) 本折り部5について

本折り部5では、左手フレーム、中央フレーム、右手フレームが配置され、これらに対応して、上部左手レーム、上部中央フレーム、上部右手フレームが設けられ、対応する上下のフレームは一体に幅方向に移動できる。

各フレームには、各種アタッチメント(上部無端ベルト52、下部無端ベルト51、折曲ベルト、ガイド)が設けられ、コンピュータ制御装置8からの指令により、フレームとともに位置決めされる。

したがって、被告各製品の本折り部5は構成要件Dの位置決め装置を備えている。

(5) トランスファー部6について

トランスファー部6には、左手フレーム601と右手フレーム602とが平行に設けられ、これらフレームは回転軸を介して幅方向に移動できる。

これらフレームの上には、上下の無端ベルト62、61からなる一対のベルト組が乗せられ、上下無端ベルトの各長さ方向におけるベルトストロークは、カートンブランクの入力された高さに基づいて、コンピュータ制御装置8からの指令により決められる。

また、ブランク高さに対応する上下の無端ベルト602、601の位置決めも、コンピュータ制御装置8からの指令により作動されるラック棒及びピニオンを備え、この伸縮機構による伸縮動作は検出され電気信号としてコンピュータ制御装置8に送られる構成になっている。

したがって、被告各製品のトランスファー部6は構成要件Dの位置決め装置を備えている。

(被告の主張)

(一) 構成要件Bについて

(1) 「特定の少数の寸法を示す信号」について

被告各製品では、カートンブランクの型信号は入力されるが、カートンブランクの特定の少数の寸法を示す信号は入力されない。すなわち、被告各製品においては、カートンブランクの補正された数値が入力されるので、それぞれ個性があり、それは演算の基となる数値ではない。それゆえ、入力された数値を他の部分の数値に変え、又は置換することは不可能である。さらに、本件特許発明においては「カートンブランクの特定少数の寸法を示す信号」が入力されると「カートンブランクのすべての寸法信号を演算するものであるが、被告各製品では、カートンブランクの端縁及び罫線に関するすべての数値を入力していることから、カートンブランクのすべての信号を演算する必要がない。

(2) 「選択手段」について

被告各製品では、底折りフック35´など多くのアタッチメントが手動で取り付けられ、除去されるため、本件特許発明における選択手段を用いる余地のないものが存在する。

これを敷衍すると、被告各製品のアタッチメントのうち、① 制御信号により位置決めされるものとしては、301A(左手フレーム)、302A(中央フレーム)、303A(右手フレーム)、301C(左手フレーム)、302C(中央フレーム)、303C(右手フレーム)、501(左手フレーム)、502(中央フレーム)、503(右手フレーム)、4B(下部糊付装置)、601(左手フレーム)、602(右手フレーム)がある。② 制御信号によって水平にのみ位置決めされ、上下には手動で位置決めされるものとしては、13(サイドガイド左)、13(サイドガイド右)、35(底折りフック左)、35(底折りフック右)、4A(上部糊付装置左)、4A(上部糊付装置右)、61(下部無端ベルト左)、61(下部無端ベルト右)、62(上部無端ベルト左)、62(上部無端ベルト右)がある。③ オペレーターの手により取り付けられるものとしては、11(無端ベルト 七セット)、13(サイドガイド昇降レバー左右)、14(カートンブランク支持レバー四セット)、15(フィーダーゲート 二セット)、33A(カートンブランク受けリール 二セット)、340(折戻しガイド)、33B(カートンブランク受けリール 二セット)、33C(カートンブランク受けリール 二セット)、35´(底折りフック 二セット)、35″(底折込板 二セット)、35a(折曲げガイド)、35b(折戻しガイド)、35s(補助フック装置 二セット)、55(カートンブランク受けレール 二セット)、56(補助部品ユニット)、71(下部無端ベルト 左右二セット)、72(上部無端ベルト左右二セット)がある。そして、右のほか、図面上に表示されず符号の付いていないアタッチメントで、手動によって位置決めされるものが五ないし一〇か所ある。

(二) 構成要件Cについて

(1) 構成要件充足性について

被告各製品において、両サイド貼りで上部糊付装置4Aを使わないこと、底折りフック35、35´などの底折りユニットと上部糊付装置を上方又は側方に移動することは、争う。被告各製品では、両サイド貼りでは上部糊付装置を使用するし、底折りフック35´は手動で取り付け移動するものである。

(2) 「邪魔にならない位置」について

被告各製品では、不要なアタッチメントはすべて原点に復帰する。

この方式は、機械一般において従来から用いられてきたものであり、本件特許発明にいう「邪魔にならない位置」とは、これとは別個の能率的な位置である。

仮に、原点が邪魔にならない位置の一つであるとしても、これは右のとおり従来一般に用いられてきた位置であるから、本件特許発明にいう「邪魔にならない位置」からは除外して考えるべきである。

(三) 構成要件Dについて

(1) 構成要件充足性について

被告各製品が構成要件Dを充足することは、争う。

フィーダー部1に関して、被告各製品では、左右のサイドガイド13は、手動で上昇下降させるものである。

トランスファー部6に関して、上下無端ベルトの各長さ方向におけるベルトストロークについては、長さの最終位置決めは手動用押しボタンによって行われる。

(2) 「手動による位置決め」について

本件特許発明は、制御手段からの制御信号に基づいて折りに必要なアタッチメントを、所定の位置まで移動させる駆動手段と位置検出手段からなる位置決め装置を要件として備えている。

しかし、被告各製品においては、原点復帰ボタンを押さない場合であって、手動で取り付けないアタッチメントが水平方向に移動する場合に位置検出手段と駆動手段が働くのみである。被告各製品においては、垂直方向は必ず手動で位置決めされ、かつ前記のとおり多くのアタッチメントは手動で取り付けられるのであるから、すべてのアタッチメントが自動的に(上下方向にも)位置決めされる本件特許発明とは、構成を異にする。

さらに、被告各製品において、原点復帰ボタンを押すのはオペレーターの判断によるものであり、原告が主張するようにコンピュータの指示によるものではない。

また、底折りフック35、35´の昇降については、コンピュータの指示によるのは上昇のみであって、下降はオペレータの手動によって行われるものである。

(原告の反論)

(一) 「特定の少数の寸法を示す信号」について

被告各製品は、株式会社大崎電業社作成の取扱説明書(甲一五)のとおり、わずか一〇個のデータを入力するだけで二一か所の調整ポジションの各設定位置を演算するものであり、このわずか一〇個のデータの入力は、カートンブランクの特定の少数の寸法を示す信号に他ならない。

(二) 「選択手段」について

前記甲一五号証の一二頁では、干渉チェックの基準において、選択するカートンブランクの型がTypeとして示され、それに応じて干渉チェックの基準が適用されるアタッチメントが異なっている。このことからも、被告各製品が選択手段を持っていることが分かる。

(三) 「邪魔にならない位置」について

本件特許発明の「邪魔にならない位置」は上方外側である。そして、この位置は被告各製品における原点ないしポジション原点に一致する。

(四) 「手動による位置決め」について

被告各製品において、原点復帰ボタンを押すことは、コンピュータの指示による。別紙「甲第一五号証グラフィックパネルのエレメントと目録一、二のアタッチメントの対応表」に示すとおり、被告各製品では、三種の折りに必要なアタッチメントには、フレームと一体に移動して位置決めされるものと、単独で移動して位置決めされるものとがあり、いずれもコンピュータにより自動的に位置決めされている。

被告各製品におけるコンピュータ装置で演算されるポジションは二一個であり、フレームに取り付けられて位置決めされるアタッチメントを含めるとアタッチメントの数は四〇個以上に達し、本件特許発明で対象としているものと一致する。

右に加えて、被告の提出する回路図(乙一ないし三)によっても、折りフック、上のり装置の高さ方向、幅方向の移動が、コンピュータにより自動的に行われていることが分かる。また、サイドガイドの下降についても、コンピュータの制御に基づき行われている。

2  原告の損害の額

(一) 原告の主張

被告は、本件特許権の登録日(昭和五九年二月一三日)以降、少なくとも合計二〇台の被告各製品を製造、販売した。その販売額は一台金三〇〇〇万円であり、一台当たりの利益はその三割であるから金九〇〇万円である。したがって、被告は右製造、販売により金九〇〇万円に二〇台を乗じた金一億八〇〇〇万円の利益を得た。

被告が得た右利益の額は、原告が受けた損害の額と推定される(特許法一〇二条二項)。

(二) 被告の主張

原告の主張は争う。

第三争点に対する判断

一  争点1(被告各製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか)について

1  本件特許発明における「アタッチメント」の範囲

(一) 本件明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載によれば、従来のカートンブランクの折装置においては、カートンブランクの型又はサイズの異なる作業をする場合、その都度、折りに必要な各アタッチメントをそのカートンブランクに合った所定の位置に手動でセットすることを要し、右アタッチメントの調整作業は、作業者にとって長い時間を要する困難な作業であったところ(本件公報(甲二)二欄三〇行ないし三欄一三行。)、本件特許発明は、右のような従来装置における作業能率上の問題点を解決することを目的とし、「折の本作業に先立って行う各種アタツチメントのセツテイングが完全に自動化されること」、「カートンブランクの型に従つて、必要なアタツチメントと不必要なアタツチメントを区別することが出来、又カートンブランクのサイズに従つて、アタツチメントのセツテイングに必要な数値を電気的な信号として記憶させておき、必要なとき随時出力させてアタツチメントを所望する位置にセツテイング出来ること」及び「各アタツチメントのセツテイングに必要な数値を記憶させるに際し、全てのアタツチメントについて必要な数値を夫々個々に測定し記憶させるのではなく、多くの必要な数値の中から特定の数個の数値のみを制御手段に入力させることにより他の必要な全ての数値を自動的に電気的信号として演算させ記憶させ、かつ出力させることが出来ること」に特徴があるものとされ(本件公報三欄一四行ないし三四行。)、さらに、そのための構成として、「カートンの折に必要なアタツチメントと不必要なアタツチメントを制御手段により識別し」(本件公報三欄三九行ないし四一行。構成要件B(2)の「選択手段」)、「不必要なアタツチメントを折作業を行なうとき邪魔にならない位置に退避させるか、或いは該位置に留めおく為のアタツチメント逃がし機構及び駆動手段を使用し」(本件公報三欄四一行ないし四四行。構成要件Cの「アタッチメント逃し装置」)、「カートンブランクの進行方向と平行な任意の一つの線、或いはカートンブランクの進行方向と一つの罫線又は縁を折の全行程を通じて適用される基準線として選び、該基準線から他の特定されたカートンブランクの進行方向と平行な少数の罫線又はカートンの縁までの距離に応じた基準となる電気信号を入力したとき、各工程における前記基準線と折に必要なアタツチメントの所定位置との距離に応じた電気信号を演算し記憶し出力するアタツチメント制御手段、例えばマイクロコンピューターを組み込んだ入力回路、選択回路、カウンター回路、演算回路、記憶回路、呼び出し回路、比較回路、出力回路、操作回路等を有する制御手段を使用して、必要に応じて前記記憶回路に必要なデータを記憶しておき、かつ該記憶回路からデータとしての電気信号を出力させ」(本件公報四欄一行ないし一六行。構成要件B(3)の「演算手段」)、「該出力電気信号に基づいて制御される前記アタツチメント逃し機構の駆動手段を含めたアタツチメント駆動手段、例えばクラツチブレーキ付き正逆回転モータ、パルスモータ、エアシリンダー、油圧シリンダー等を駆動して、各種型及びサイズのカートンブランクに応じて折に必要な全てのアタツチメントを所望する位置へ自動的に移動させる」(本件公報四欄一七行ないし二三行。構成要件Dの「位置決め装置」)という構成を採用するものとされている。

(二) 以上のような本件明細書の「発明の詳細な説明」欄における本件特許発明の目的、特徴及び構成に関する記載を総合すれば、本件特許発明においては、各種の型及びサイズのカートンブランクの折りを行う装置において、従来手動で行われていた、折りに使用されるアタッチメントのセッティングが、構成要件B、C及びDの各手段又は装置の働きによって「完全に自動化」されること、すなわち、折りに使用されるすべての部材について、制御手段によりその要不要が判断され、不要と判断されたすべての部材が、制御手段からの制御信号に基づいて自動的にアタッチメント逃し装置により折りに邪魔とならない位置に移動又は保持され、他方、必要と判断されたすべての部材が、制御手段からの制御信号に基づいて自動的に位置決め装置により所定の位置に移動させられることが必要とされるものであることは、明らかである。

してみると、本件特許発明の構成要件B、C及びDにおける「アタッチメント」とは、構成要件Aのカートンブランクの折装置において、カートンブランクの折りに使用されるすべての部材を指すものというべきであり、したがって、各種の型及びサイズのカートンブランクの折装置において、折りに使用される部材の中に、制御手段による要不要の判断が行われなかったり、制御手段からの制御信号に基づいて自動的にアタッチメント逃し装置や位置決め装置による位置決めが行われないものが含まれている装置は、本件特許発明の構成要件B、C及びDを充足するものとはいえないことになる。

2  被告各製品における本件特許発明の構成要件B、C、Dの充足性

(一) 被告各製品において折りに使用される部材の中には、次のとおり、制御手段による要不要の判断が行われなかったり、制御手段からの制御信号に基づいて自動的に位置決め装置による位置決めが行われないものが含まれている。

(1) 折戻しガイド340について

被告各製品においてカートンブランクの第三罫線の折り戻しを行うアタッチメントである折戻しガイド340は、位置制御される上部中央フレーム332Bに角棒を介して取り付けられている。折戻しガイド340は、同フレームとともに移動するが、折りに際しては、第三罫線の折り戻しに適した位置に、角棒に対して手動で移動させ、位置決めすることが必要である(当事者間に争いのない別紙物件目録一、二の記載及び弁論の全趣旨)。

したがって、これは、本件特許発明の構成要件D中の位置決め装置を欠くことにより、手動でセッティングすることになるアタッチメントというべきである。

(2) 底折りフック35´について

被告各製品の折返しユニット3Cにある底折りフック35´は、底フラップを折るフックの一つであるが、ダイアグナルフラップを折る底折りフック35とは異なり、通常のフラップを折るものである。

底折りフックは函の大きさに適合するものをその都度取り替えて用いており、当然、型の種類が変わってもそれに合ったものが選択されると考えられるが、その着脱は手動でされている(当事者間に争いのない別紙物件目録一、二の記載及び弁論の全趣旨)。

したがって、これは、本件特許発明の構成要件B中の型信号に基づきアタッチメントの要不要を判断する選択手段を欠くことにより、手動でセッティングすることになるアタッチメントというべきである。

なお、原告は、底折りフック35´について、作業時の幅方向の位置決めは右手フレーム、中央フレームと一体に自動的にされる旨主張するが、仮に右主張のとおりとしても、「アタッチメントのセッティングが完全に自動化される」という本件特許発明の特徴に照らし、一部手動操作を伴う部分が残る以上、それは前記の選択手段を欠くというほかはない。

(3) サイドガイド13について

サイドガイド13は、カートンブランクをそのサイズに合わせて幅方向を規制して折りを行う部分へ送るもので、フィーダーユニットにおけるアタッチメントである。

このセッティングに際しては、邪魔になるアタッチメントのうちで手で除去するべきアタッチメントを手動で除去した後、このサイドガイド13を手動で上昇させる。次の水平方向の位置決めは自動的に制御されるが、その後は更に、無端ベルト11をサイドガイド13の邪魔にならない位置に手動で移動した後に、サイドガイド13も手動で下降させる(当事者間に争いのない別紙物件目録一、二の記載及び弁論の全趣旨)。

したがって、これは、本件特許発明の構成要件D中の位置決め装置を欠くことにより、手動でセッティングすることになるアタッチメントというべきである。

原告は、サイドガイド13に関し、被告各製品がこの部分を手動としているのは、サイドガイドの昇降はオペレーターの判断に任せられる領域であり、その自動化はかえって多くの寸法や形状のカートンブランクを折るのに支障が生じるためであって、本件特許発明の各実施例でもサイドガイドの位置決めはカートンブランクの寸法に応じて幅方向に移動させてセットすることのみしか示されていない旨主張する。

しかし、本件明細書では、サイドガイドの昇降については言及していないだけであり、その記載からみて手動で行うことを示唆しているとは考えられず、前記のとおり、本件特許発明の特徴が「アタッチメントのセッティングが完全に自動化されること」にある以上、一部に手動操作を伴う位置決めが行われることが、本件特許発明の右のような特徴と相容れないことは明らかであるから、原告の右主張は採用できない。

なお、原告は、サイドガイドの制御回路図(乙一の1、2)を根拠にして、サイドガイドの下降もコンピュータの制御下にある旨主張する。しかし、この制御回路図からは、幅方向の移動に関する制御回路にサイドガイド下降限でのリミットスイッチの作動で励磁されるリレーコイルの接点が挿入され、右リミットスイッチとサイドガイドの幅方向の移動が関連づけられていることは読み取れるものの、サイドガイドの下降自体がコンピュータの指令に基づくような回路の構成になっていないことは明らかであるから、原告の右主張も採用できない。

(二) 以上を総合すると、被告各製品においては、折りに使用される各部材のうち、少なくとも底折りフック35´につき、入力された型信号に基づきその要不要を判断することが行われないから、被告各製品は、折りに使用されるすべての部材についてその要不要を判断する選択手段を具えた制御手段を有しておらず、本件特許発明の構成要件Bを充足しない。

また、被告各製品においては、折りに使用される各部材のうち、少なくとも折戻しガイド340及びサイドガイド13につき、制御手段からの制御信号に基づき自動的にこれらを折りに必要な所定の位置まで移動させることが行われないから、被告各製品は、制御手段からの制御信号に基づき折りに必要なすべての部材を所定の位置まで移動させる駆動手段及び位置検出手段からなる位置決め装置を有しないものであり、本件特許発明の構成要件Dを充足しない。

二  結論

よって、原告の本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 三村量一 裁判官 和久田道雄 裁判官 田中孝)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
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